テストコース:桶川スポーツランド
テストに使用したのは桶川スポーツランドのフルコース。絶対的な速度は高くはないが、大小様々なコーナーが連続し、タイヤを評価するにはふさわしいコース。ストレートでは操縦安定性(直進安定性)をチェック、路面の荒れた部分やグラベルでは乗り心地のチェックなどを行った。
スクーターのPCXとシグナスXではセンタースタンドが接地するほどのアグレッシブな走りでチェックを行った。
制動力チェックでは、ドライ制動は60km/hから、ウエット制動は40km/hからフルブレーキ。ブレーキをかけてから完全停止するまでの距離を計測した。なお公正を期するため、スピードは実測値で統一。計測はGPSロガーの「デジスパイスU」を使用。
ストリートで多用されるテスト車の特性上、雨中での乗車頻度も高いはず。そのためコースに散水し、ウェット路面でのグリップ力も確認した。
ストリートハイグリップシリーズのフラグシップモデルであるTS689は、スポーツモデルに最適なコンパウンドやトレッドパターンを採用。フロント、リヤをそれぞれ専用設計としたことで優れたハンドリングを実現しながら、ドライはもちろんのことウエット路面での圧倒的なグリップ&制動性能を実現している。また最新のコンパウンドの採用でロングライフも両立。またデザインにもこだわりリムゾーンのチェッカーの刻印は高級感を醸し出している。
ティムソンのTS689は走り出してすぐに体感できるのが転がり抵抗の少なさだ。とりわけフロントは軽やかで、曲がりたい方向へ目線を向ければ素直に旋回を開始。そこに小難しい操作や特別なスキルはまったく必要ない。バンク角が深まってもその印象は変わらず、思い描いたラインをトレースすることができる。一方、リヤはがっしりとした剛性を伝え、パワーをガンガン掛けることを許容するスポーティさが特徴だ。フロントで旋回力を、リヤで立ち上がり加速を稼ぐという役割が明確でスイスイと流れるようにコーナーをクリアできるナチュラルさが光る。対するIRCのRX-02は、もう少しライダーへの依存度が高い。全体的にややアンダーステアな味つけが施されており、フロントへしっかり荷重することを意識すると高い旋回力を発揮。そのポテンシャルを引き出すには、ワンランク上のスキルがあった方が楽しみの幅が広がるだろう。グリップ力は同等にして充分ながら、ステージもスキルも選ばないという懐の深さならTS689だ。
快適な乗り心地と高いトータル性能でハイエンド通勤タイヤとして多くのユーザーから高い評価を得ているタイヤ。雨でも安心のハイグリップと圧倒的なロングライフを両立しながら、特徴的なトレッドパターンとサイドにシボ加工を採用したことで、コーナリング時のパニックブレーキでも安定した制動力を発揮する。まさにデザインと性能を両立したタイヤとなっている。PCX、DIO110、トリシティーなどにおすすめだ。
今回の試乗コースである桶川スポーツランドには舗装の荒れた部分がいくつかあり、ギャップも点在している。そこを不用意に通過すると、サスペンションが瞬間的にボトムすることがあるものの、ティムソンのTS692は常に優れた路面追従性をキープ。衝撃をタイヤそのものがしなやかに減衰力を発揮し、不快な突き上げを軽減していることが分かる。例えば、一般道の工事区間ではアスファルトの凹凸がしばらく続いたり、マンホール部分だけ飛び出しているようなことも少なくないが、そうした場面でも乗り心地の良さを確保。スムーズに通過することができるはずだ。IRCのMOBICITYは、減衰がより素早い印象で、同じギャップでもTS692が「フワッ」といなすとすれば、こちらは「ビシッ」と受け止めると表現するのがふさわしい。そのため、ペースを上げた時の安定性に重きを置くならこちらに分がある。
ストリートハイグリップシリーズの中でもスクーター専用に設計したタイヤ。通勤などの用途に最適なしなやかな高品質コンパウンドと独特なデザインのトレッドパターンを採用。耐摩耗性を維持しつつグリップ力も向上し、雨でも安心して走れるハイエンド通勤専用タイヤがTS660だ。シグナスX、アドレスV125、マジェスティ250などにおすすめだ。
TS660が特徴的なのは、従来品のTS600と比較した場合の接地面積の改良だ。トレッド左右の接地幅を細くした一方、それを前後方向に拡大。これによってブレーキング時の安定感と車体をバンクさせる時の軽快感を両立しているのである。それがもたらすハンドリングは街中をスイスイと走らせる時に極めて有効で、小回りが効き、手足のように扱える機動性はシグナスXのコンセプトに則ったもの。それでいて、もしもの急制動にも応えてくれるなど(左表の制動距離を参照)、極めてバランスよく仕上げられている。その点、MOBICITYを装着した時の挙動は落ち着きのあるものだ。PCXで見せたスタビリティの高さはシグナスXでも基本的に変わらず、交通量の多い街中よりも緩やかなコーナーが多い郊外でそのハンドリングが活きるタイプである。