現在、オートバイ用バッテリーには「開放型」と「MF(メンテナンスフリー)型」の2種類のタイプが存在します。これらのタイプは鉛を使用した従来からあるタイプのものです。
以前は開放式が主流でしたが、現在は車両多様化による作業性、コンパクト性を求めたニーズが高まり、MF型が主流となっています。また現在ではMF型でもより高寿命のGEL(ジェル)タイプもあります。さらにリチウムイオンを採用した「リチウムイオン型」も登場し、徐々にラインナップが増えております。
バッテリー液をジェル状としたのがMF型GELバッテリーです。このバッテリーは、ジェル状バッテリー液をガラス繊維状のスポンジマットに浸み込ませた独自の内部構造を持っていることが最大の特長です。液入り充電済みなので、横置きで搭載しても液漏れの心配がなく、耐震性能が高いことも特徴です。
MF型GELバッテリーはこちらMF型は使用中に内部から発生するガスを極板で吸収する特殊構造と、バッテリー液を綿状セパレーターに染込ませ、余分な液を無くしたことで密閉型にすることを可能にしています。フタが開かないためシールドバッテリーやVRLAという呼び方もあります。液の減らない特殊構造によりバッテリー液の補充が不要のため、メンテナンスが楽で現在主流となっています。
MF型バッテリーはこちらバッテリーのキャップ部分が開閉できるタイプのバッテリーです。使用中に内部から発生するガスは排気口から放出されます。水の電気分解と蒸発によりバッテリー液が減少しますので、定期的な補充が必要です。開放型には6Vと12Vの両方がラインナップされていますが、年式の古い車両においては6Vのバッテリーを使用している事があります。バッテリーの1セルの電圧は2Vです。そのセルが3つあるものは6V(2V×3)。6つあるものは12V(2V×6)です。6Vと12Vに関しては互換性がありませんので注意が必要です。
開放型バッテリーはこちらリチウム系バッテリーは、近年、自動車では採用される車種が増えつつありますが、オートバイ用はまだ少数です。オートバイのエンジン始動用として使われるリチウムイオンバッテリーは「リン酸鉄リチウム」の使用が一般的です。重量は鉛バッテリーの1/3程度で、その軽さゆえに競技用オートバイに純正装備されるほどです。エネルギー密度が高いため、容量が小さいものでも始動が速いのも特徴です。また自己放電が少なくロングライフというメリットもあります。一方で冬季の始動性能が低下する症状が出る場合もあります。
リチウムイオン型バッテリーはこちら現在オートバイ用バッテリーには、電解液を注入してから使用する液別タイプと既に電解液が入って充電されている充電済タイプがあります。
液入充電済タイプは既に電解液が入って充電されていますので、そのまま使用できます。ただし、購入から使用開始までに期間があく場合は、補充電をする必要があります。
充電済みタイプはこちら
液別タイプは使用前に電解液を注入して使用します。電解液と中の極板が反応して電気が発生し、そのまま使用を開始することができます。ただし、製造されてから年数の経ったものや、密封シールが剥がれていたものは十分な電気が発生しない場合もありますので、その際は電圧をご確認頂き、充電をしてから使用を開始してください。
※電解液は希硫酸ですので購入店にて注液および充電をしてもらうようにしてください。
オートバイ用バッテリーの型式はアルファベットや数字からなっており、JIS規格に基づいて記載されています。基本的に3種類に分類されますが、型式により意味が異なるので以下を参考にしてください。
見方はMF型バッテリーと同じですがメーカーによって異なる表記となっています。互換性を確認する場合は、以下のような表記を参考にしてください。
オートバイ用バッテリーの寿命は一般的には2〜3年と言われています。使い方や気候・メンテナンス具合によって大きく異なります。しかし、現代のオートバイではインジェクションの採用や電子デバイスを搭載している車両が増える傾向にあり、バッテリーにかかる負荷が高く寿命が短くなってしまう傾向があります。バッテリーの寿命が近くなると、「エンジンのかかりが悪い」「ニュートラルランプが非点灯、暗い」「ヘッドランプが暗い」「ホーンの音が小さい」「ウインカーが点灯しない、点灯速度が遅い」といった症状が現れます。このような症状が見られる時はバッテリーをチェックするようにしましょう。バッテリーを長持ちさせるためには、半年ごとに電圧のチェックや補充電を推奨しております。
スターターボタンを押して
エンジンのかかりは良いか
ウインカーを操作してみて
点滅作動は正常か
ホーンボタンを押して
音は正常に鳴るか
エンジン回転数によって
ヘッドライトの明るさが
変化しないか
ニュートラルランプが
非点灯、いつもより
暗くないか
バッテリーを充電する際には、の種類に適合していない充電器を用いると、バッテリーの寿命に悪影響を及ぼすばかりか最悪の場合、バッテリーの破裂にもつながることがあります。特にMF型バッテリー、リチウムイオン系バッテリー、6Vバッテリーには注意が必要です。必ず、お使いのバッテリーに適した充電器を用いるようにしましょう。
まずバッテリーを車体から取り外す際は−(マイナス)端子から行います。一方で充電器をバッテリーに接続する際には、逆に+(プラス)端子から行います。作業する際には+端子用のクリップと−端子用のクリップを接触させないように注意しましょう。接触するとショートし、バッテリー充電器が破損する可能性があります。
バッテリーの充電中にはガスが生じることがあります。長時間このガスを吸引すると健康に悪影響を及ぼすことがありますので、密閉された室内では充電を行わないようにしましょう。
バッテリー充電器は単に充電するだけでなく、バッテリーの寿命を伸ばしてくれるものもあります。用途に合わせて選ぶようにしましょう。
バッテリー充電器はこちらバイクに乗らず放置すると鉛電池が自然放電をし、自然放電が進むとサルフェーションと呼ばれる現象によってバッテリーの性能は著しく低下します。それを防ぐための充電器がトリクル充電器です。トリクル充電器は自然放電を補うために微量の電流を流し続けます。そのため満充電は維持されますが、電流を流し続けるぶんバッテリーには負荷がかかってしまうという点もあります。
サルフェーション除去機能は、バッテリーの電極まわりについた絶縁物質「硫酸塩」を除去する機能です。サルフェーション(絶縁物質がついた状態)は、バッテリーの寿命を縮める要因の1つ。サルフェーション除去機能付きのバッテリー充電器を定期的に使用すれば、バッテリーが長持ちします。
開放型バッテリー専用充電器はMF型バッテリー充電器よりも強めの電流を流すタイプとなっています。そのため、MF型バッテリーに使ってしまうとに破裂してしまう恐れがあるので使用しないようにしましょう。また開放型バッテリーを充電をする際は、フタを開け中にバッテリー液が入っていることを確認し、風通しのよい場所で充電をしてください。もしバッテリー液が足りない場合は、精製水(もしくは補充液)を規定量まで補充してから充電してください。
リチウムイオンバッテリーは最大でも14Vほどの電圧で充電するのが適切で、過電圧での充電はトラブルにつながります。「サルフェーション溶解」や「回復充電」といった機能がある充電器では過電圧となってしまうため、リチウムイオン専用の充電器を使用するようにしましょう。
バッテリーの充電不足(過放電)の状態を「バッテリー上がり」、バッテリーの経年劣化による電気容量の縮小を「バッテリー寿命」といいます。「バッテリー上がり」では、充電器で充電することで電気容量を回復することができますが、「バッテリー寿命」を迎えた場合は充電器で充電してもその電気容量はほとんど回復されません。一方で「バッテリー不良」では内部で正常に化学反応が起きないために充電作業が正常に出来なくなります。
バッテリー上がり | バッテリー寿命 | バッテリー不良 | |
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可能性 | 状況、使い方次第で 常に発生の可能性がある |
2〜3年周期で 発生する可能性が高い |
運送時の破損や 製造上の不具合で発生 |
電 圧 | 12.0V以下 | 約12.5V | 10V以下 |
確認方法 | 充電を実施 | 充電を実施 | 充電を実施 |
結 果 | 充電することである程度の 性能・容量が回復する |
充電することである程度の 性能・容量が回復する |
充電ができない |